風のような愛、空ろな心怜司が、育ててきたあの小娘に流星群を見せるため、高熱の私を山道に置き去りにしたそのとき、私は離婚を決めた。
友人が怜司に「機嫌を取ってやれ」と耳打ちする。
「兄貴、妹は妹、妻は妻。重さを取り違えるなよ」
怜司は気定まって、どこか高みから笑う。「本当に離婚すると思うか。脅しかけてるだけだ。
何年も俺が落ち着ける場所を与えてやった。俺がいるから彼女には家がある。俺から離れる?できるわけない。
見てろ、離婚届が受理される前に、泣いて復縁を願いに来るさ」
だが三十日が過ぎても、私は一度も振り返らない。
彼が四方八方に私を捜していたころ、私は霧に包まれた山中の別荘で、静かにお茶を飲んでいた。
「旭兄、やっぱりここがいちばん落ち着くね」